・ROCKS・
ライブレポート・2000



7/28〜30+前夜祭
フジ・ロック・フェスティバル’00
 フジ・ロック・フェスティバルは、4回目にして、初めて2年連続同じ会場の苗場で開催され た。                                           場所は同じでも、去年は夜行バス+民宿というプランだったところを、今年は青春18切符 (JR鈍行)+キャンプにしてみた私には、新鮮な4日間だった。参加3回目にして、やっとフェ スの醍醐味を味わい尽くせたという感じだ。                         また、今回は大物アーティストの参加が少ない上に、他のフェスがたくさん開催され、集客が 危ぶまれる感もあったのだが、始まって見ればそんな懸念は吹き飛んでしまった。フェス=祭り にふさわしい、ビッグ・ネームではなくとも圧倒的な魅力を持った、オリジナリティ溢れるライ ンナップ。お化け屋敷、前夜祭の花火と盆踊り。                       とても一言では言い尽くせない体験を、順を追って書いてみたいと思う。           博多駅を、朝9時頃出発。鹿児島から来た初対面の男の子2人と鈍行列車に乗り込む。尾道駅 からもう一人乗り込んで来て、夜23時頃には尾道着。18切符で乗れる夜行列車に乗って、翌 朝には東京着だ。                                     前夜祭当日の朝、上野から越後湯沢を目指す。ここで、東京近辺からの18切符フジロッカー ズの一群と合流する。その首謀者は、頭にひまわりの造花をつけて去年のフジ・ロックや他のラ イブに出没していた、結構有名な人である。                         列車に乗りっぱなしの疲れを感じる暇もなく、お昼頃には越後湯沢着。シャトルバスに乗る と、やがてお馴染みの苗場プリンスホテルが見えてきた。                   ここからが初体験、いよいよキャンプサイトに出陣だ。去年は傾斜と日差しで悲惨だったそう だが、約束通りちゃんと改善されていた。簡易シャワー、BBQエリアもある。          こんな時便利な携帯で、前後して到着した友達と連絡を取り合って集まり、遠いけど涼しそう なエリアにテントを並べる。申し合わせていなかった友達とも、たまたま出くわし、側にテント を張ることが出来た。2〜4人で同じテントに潜り込む者あり、一人用の小さなテントで過ごす 者あり。10人くらいのきままな輪が出来た。離れたところに場所をとっている友達や、民宿に 泊まる友達もいて、それぞれ自分のペースで楽しむのがフジ・ロック流、というところか。    たまたま雑誌「SNOOZER」の方々がこの穴場的エリアに目を付けて(?)、私達のテントの周 りをぐるりと囲むようにテントを並べられたのには、ちょっとびっくり。            前夜祭までまだ時間があったので、私はインドの民族衣装・サリーに着替える。フェスには動 きやすいジーンズとTシャツ、と思っていたのだが、去年はフィッシュが出演していたせいか、 ネイティブ・アメリカン風のワンピース、ロングスカート姿の女性を多く見かけた。他にもラス タマンなども素敵だったので、今年は涼しげで可愛く、お祭り気分も盛り上がるサリーを着よ う!と決心していたのだった。                               連れが持ち込んだ大量のビールと泡盛で、皆で祝杯をあげた後、前夜祭会場へ向かっている と、移動車に乗ったエイジアン・ダブ・ファウンデーションのメンバーが通過。友達がきゃー きゃー喜んでいると、笑って手を振ってくれたディーダーの可愛さに、私も思わずよろめく。  いよいよ前夜祭開幕。会場は、手前に位置するオアシス(屋台・クラブテントエリア)とレッ ド・マーキー(ダンステント)だけが解放されていた。オアシス中央に、何だか怪しげな櫓が組 んである。浴衣姿のギャルもいて、すっかり日本の夏。でも相変わらずパキスタン・カレーやシ シカバブがうまいのだった。                                地元の太鼓が披露された後、おばちゃん数人が「インストラクター」となって、「苗場音頭」 が始まった。「うまく踊ったらハッピがもらえる」と聞いて、10回以上も延々と同じ曲が続く 中、半ばやけ気味で踊る私達。手拍子を打った後、「ウォーィ!!」と叫んでジャンプするとい う、ロック・アレンジが自然発生していておかしかった。                   東京からキック・ボードで来た男の子や、全身タイツの集団などが櫓で自己紹介。私もサリー をアピールしようとするが、闇夜に映えず、ハッピはもらえなかった…。ひまわり君はちゃっか り宿泊券か何かを手に入れていたようだが。                         越後もち豚の串焼きに目を付けて焼き上がるのを待っていると、櫓から何だかお祭り気分のス カの音が聞こえてきた。ギャズ・メイオール率いるトロージャンズに、ケムリも入り乱れての演 奏だったらしい。知識不足の私はトロージャンズを知らなかったため、彼等の無国籍なメンバー 構成といでたちに驚かされる。ハッピ姿でメロディカを奏でるギャズに、年季の入ったしぶいプ レイを聴かせる男性&日本人女性のサックス・プレイヤーズ、カリビアン・スタイルのドラ マー、バグパイプを吹くメンバー(多分、この日スコットランドの衣裳のキルトを穿いていた) 等…。奏でる曲は「リンゴ追分け」。                            この後のケムリの出番に備え、レッド・マーキーへ向かう。まだDJタイムだったが、ノリノリ のDJの後に姿を現したのは、またしてもギャズだった。スカはともかく、ピストルズ、アレサ・ フランクリンにブルーズなんかかけて、ケムリで一暴れしようと待ちかまえる若者を、腰砕けに させる。曲のつなぎも、アナログ盤のぶちぶちいう雑音丸聞こえの後でゆっくりレコードを変え るもんだから、変な間が空いてしまって古くさい。妙な味わいを出していた。          ケムリが始まると、早やモッシュ&ダイヴの渦!エネルギッシュでハッピー!!        その後、スカフルキング、フィッシュボーン、ピールアウトが演奏、前夜祭にして早くも飛ば しすぎの客も多かったかと察せられた(かくいう私も…)。                  1日目の朝、民宿街に行って、朝風呂を楽しむ。朝食バイキングでのんびりしすぎて、入場 ラッシュに巻き込まれ、フェスティバル開始の大将(スマッシュ社長)の挨拶を聞き逃す。入場 の列に並んでいると、雨が降り出した。無論カッパは持ってきているもののキャンプサイトに置 いてきたという友達と、レジャーシートをかぶっていると、やおら目の前にレインコートが差し 出された。ハイネケンのビニールカッパだ。ひとえに感謝!また入場時にもらえるサイトマップ &タイムテーブルのZカードは今年も健在。ビニールケース入りで雨にも強く、是非他のフェス でも取り入れて欲しいところ。                               会場着、まずはサリー着用を諦め、丈夫なレインスーツに着替える。雨の中で苦戦しつつレ ジャーテントの陣地を設置し、荷物を置いた。それから間寛平withアメマ〜ズを見るために、 フィールド・オブ・ヘヴンに向かった。                           友達とはぐれるほどの人だかりの中、寛平登場!「今日は、アヘアヘやないぜ〜、アヒハー やー!!」と言ってパンクを歌い出した彼は、確かにアヘアヘではなかった。あちこちから、 「かっこいいー!」と声が上がり、ダイヴも続出。途中から遠藤ミチロウが現れて、最後は〈仰 げば尊し〉 で大盛り上がりだった。                            プラシーボに向けてグリーン・ステージに移動する途中、ホワイト・ステージのイエロー・マ シンガンを目撃。声と音だけ聴くと男かと思うけど、可愛い女の子達なんだよねえ…。去年のア タリ同様、少し怖かったのでグリーンに逃げてしまった。                   フィッシュ&チップスで腹ごしらえした後、結局プラシーボはちょっと確認しただけで、ガー リック・ボーイズに備えて再びホワイトに移動することにした。フジ・ロックは、グリーンや レッド・マーキーとホワイト、ヘヴンとの距離がかなりあり、しかも山道なので、うまく計画を 組まないとやたら体力を消費してしまう事になる。山道には不思議なオブジェが色々飾られてい て、行ったり来たりもなかなか楽しくはあるが。                       フジに来ていた友達はおよそ20人くらいで、それぞれのペースでうろついているため、一度 に集うことがない。こうして目当てのライブを見に来た時に、予想されたメンツがそこにいるの は面白い。私がガーリックを見に来たのは、そんなやる気満々の友達の観察・撮影のためなので あった。ライブが始まると、さっそく辺りはもみくちゃ。激しくすっ飛ばされたり、ダイヴした り、ダイバーを持ち上げたり、ハイテンションで踊りまくる友達をカメラで追いつつ、私も ぎゃーぎゃーはしゃいだ。ハードな音に、謎の歌詞。〈あんた飛ばしすぎ〉まで飛ばしまくった まま、終了。                                       またグリーンに戻ると、フェスならではの昼寝族は、雨の中でも健在だった。透明ゴミ袋にく るまれて眠る「人間真空パック」に、レジャーシートを掛け布団にして眠るヤツ。私も真空パッ ク方式で一寝入りのはずが、フー・ファイターズの間中寝てしまった…(毎年、これか?)。 イーグル・アイ・チェリーも見たかったのになあ。                      去年見逃したケミカル・ブラザーズを鑑賞。それほど好みではなかったので、ホワイトに向か う。                                           フィッシュボーンで気持ち良く一踊りの後、何の気なしにヘヴンに行ってみて、すごいものを 目撃!ラテン風に味付けされた懐かしい歌(何だか忘れたけど、童謡か何か、誰でも知っている 歌)が聞こえる方に向かっていくと、ステージには誰もおらず、客席エリアに怪しい円陣が。覗 いてみると、円の真ん中でオゾマトリが演奏していて、周りを囲んでいるのが客らしいと分かっ た。あまりに楽しいので私も加わり、踊り出す。いつのまにか客の群はオゾマトリの周りをぐる ぐる回り始めた。演奏が終わってメンバーが帰っていく時は、皆でぞろぞろ子供のようにくっつ いてねり歩き、「オゾマトリ!オゾマトリ!」と唱和する騒ぎだ。オゾマトリ=オゾ祭りなの だった。                                         さてエイジアン・ダブ・ファウンデーション。この日のトリは、グリーンのブランキーも見た かったので、途中までしか見られなかったが、ダブのあまりの心地よさに酔う。ディーダーのあ の軽い身のこなしが、またたまらん。                            グリーンまで走って、ブランキー。ブランキー・ジェット・シティとしては、これが最後のス テージだ。私は後ろの方で鑑賞するが、最後はやっぱり前の方まで行ってしまった。MCはほとん どないところが、かっこ良かった。フェスでは滅多にないアンコールにも1曲だ応えてくれた。  友達はこの後、レッド・マーキーに踊りに行ったが、私は明日に備え、テントに帰って寝た。  翌日は打って変わって晴天。私は仲間を置いて早めに会場入りした。隅っこでサリーに着替え た後、まずはグリーンのオゾマトリで一踊りだ。                       途中でホワイトに走り、トロージャンズを見る。ギャズは、キルト姿に頬にインディア風メイ ク、お馴染みの黒の帽子と杖、それと大きなLP盤も持ち出して、謎のファッション全開だったよ うな気がする。そしてアルト・サックスのメグミが、ピンクのラメっぽいドレスに、お揃いの古 風な帽子(50年代風?)姿でパワフルなプレイを見せてくれたのが忘れられない。ステージに 寝て、リンボー・ダンス状態になってサックスを吹いていた姿なんてセクシイ過ぎる…。もう一 人のサックス・プレイヤー、ルディもしぶしぶでたまらない。ホーン・セクションの使い方が、 いかにもスカじゃなくて、ジャズやブルーズっぽいのもいい。なのにがんがん踊らされたのはど ういうわけか。メンバー同士がお互いフューチャーし合い、笑い合いながら踊って演奏している につられたのかな?大家族みたいで、気持ちいいのだ。終盤を盛り上げたのは、パーカッション のナティがヴォーカルを取る〈ジェリコ〉だ。歌わせるわ、踊らせるわ、やたらと指示を出して きて、挙げ句に「しゃがめ〜!!」と言う。青空の下、観客皆でしゃがんで、なんだか異様な光 景を展開する。そんな素直な(笑)私達を見て、ギャズは何度も「フジ・ロックはいいフェス だ!世界中で一番だ!!」と幸せそうに笑っていた。                     続いてヘヴンに移動。まだケムリがやっていた。フミオさんも、「フジ・ロックは素晴らし い、これからもずっと続いていって欲しい」というようなことを元気いっぱいに言っていたの が、印象的だった。                                    この日は、ホワイトからヘヴンに向かう道およびヘヴン内は、雨上がりのぬかるみがすごかっ た!スニーカーで行くのが正解だが、草履で行ってどろどろを楽しむのもまた一興。シーナ& ザ・ロケッツの出番まで、湧き水で足を洗ったり、かなりの暑さにかき氷を食したりして過ご す。                                           そうこうする内に、シナロケ登場。肩車されて盛り上がる女の子もいて、観客はラブ&ピース の世界に突入。とても古い曲のカヴァーも披露してくれたが、これが新鮮で、素晴らしかった。  その後はシアター・ブルックだ。し、しかし暑い。タイジさんが登場すると、なんだかより太 陽が側に来たような…。タイジさん、ぎらぎらの太陽の下で、いきいきしていた。最後まで見た が、今思えばホワイトのドライ&へヴィも覗いてみたかった気がする。             次はソニック・ユースを見るべく、グリーンに戻る。途中の道で、大岩に寝そべるギャズと、 トロージャンズのメンバー発見。キルト姿で、皆さん目立ちまくっていた。写真撮らせてもらお うかなと思ったが、折しも女性ファンがメンバーにはがいじめにされて過剰サービス攻撃にあっ ていたところだったので、恐れをなして逃げてきてしまった。                 ソニックスでは、またいつの間にか眠っていた私。どうして私は、こうハードでノイジーなバ ンドの度に熟睡するのだろうか?                              ホワイトでROVOを見てきた友達が、へべれけで帰ってきた。とにかく良かったらしい、寝た かと思うと跳ね起きて、「ROVO最高!!」と叫んでまた眠る…を繰り返していた。陽が落ち て、ジョニー・マーが始まる頃、別の友達は奥田民生目指してヘヴンに向かっていたようだ。  すっかりお休みモードに入っていたが、まだまだだ。ソウル・フラワー・ユニオンを見にヘヴ ンへ行く。夜のヘヴンは、入り口にミラー・ボールが回っていて、トリップしそうな怪しさで、 ばりやばい。                                       そこをなんとか切り抜けて、ホワイトのRUN D.M.C.に移動する。ヘヴンからホワイトに出る 下り坂のところから、ホワイト・ステージが丸々見渡せるので、文字通り高みの見物を決め込 む。観客が煽られて、一斉に手を挙げたり、ジャンプしたりしている様を見るのは面白い。エア ロ・ファンの私としては見逃せない〈ウォーク・ディス・ウェイ〉を聴いた途端、安心したの か、私はまたも眠りこけてしまった。「もしもし、もうステージ終わりましたよ」と通りすがり の人に起こしてもらった時は、恥ずかしかったなあ…。この頃まだソウル・フラワーがやってい たらしいのだが、起き抜けで焦っていたためグリーンの陣地に戻る。              そしてとうとう最終日。まずは朝風呂、それから絶対やっておかなくてはならない、「BBQエ リアでインド料理」だ。すでにステージが始まりそうな時間だというのに我ながら大胆。風呂の ついでに買ってきた野菜と、家から持ってきた諸々をひっさげてBBQエリアに行くと、のんびり BBQやっている仲間がごろごろいた。私の豆スープは、火にかけたはいいが、火力が弱く、沸騰 しない…。側で、慣れた手つきで火を燃えさからせている人々にすがろうか?と思ったところ に、気の毒な友達2人がやってきた。3人で枯れ木をくべていると、側にいた人達から着火材や するめに何故かしょうゆまでもらって、無事調理も終了。本当はナンを焼いたりしたかったのだ が、まだまだ修行が必要なようだ。                             スープの入った鍋を下げて、昼過ぎに入場。フィラ・ブラジリアって見てみたかったのだけれ ど、とっくに終わっていた。レッド・マーキーのブラッド・サースティー・ブッチャーズを見 る。                                           その後、そのままレッド・マーキー前で地べたに座ってラムシュタインを待つ。なんだか友達 がぞくぞく集まって来た。かくいう私は、ラムシュタインを知らず、友達の強いすすめで見に来 ていたのだが。ターン・テーブルを燃やすという噂だったし。始まってみれば、予想以上の面白 さ!SM、ゲイ・ショー?に始まって、リアルなつくりものによる放尿(しかもそれを自ら飲 む)、挙げ句に客の頭上にメンバーの乗ったゴムボートが出没し、そのままステージに登場する という演出。曲はメタルっぽくて、ノリがいい。「ラム!シュタイン!ラム!シュタイン!」 なんて歌う曲もいい感じだ。最後は、ヴォーカルの上着が燃えていた…私にとっては、KISS気 分で、楽しかった。                                    この後のゴメズ、ヘヴンのエイドリアン・シャーウッド、ホワイトのブン・ブン・サテライツ も興味があったのだが、お化け屋敷に行くことにする。お化け屋敷があるのはホワイトとへヴン の間、アヴァロン・フィールドだ。ここにもちょっとした演奏スペースがあって、アマチュアら しき人達が演奏している。食べ物の屋台の他に、フリー・マーケット、ワーク・ショップ、マッ サージなどもある。またここやヘヴンには、ジュビリー2000、地雷問題、動物実験反対運動 などのブースもあって見逃せない。ところでお化け屋敷では、記念バッヂをお化けからもらっ て、楽しませてもらった。来年は是非、サーカスを。                     サーカスと言えば、いつ見たのか定かでないけれど、オアシスでやっていた大道芸も良かっ た。ナイフやたいまつを幾つも投げたり、口で受け止めたりするのだが、わざと怪しげな手つき でやってみせて観客をどきどきさせたり、なかなかのエンターテイナーぶり。今年は、去年に比 べて客の年齢層がさほど広くなく、同じ会場とあって便利な反面少し退屈かな?と思っていたの も、こういう場面に出くわすと忘れてしまう。フェスがあくまで単なる野外コンサートではない という好例だろう。実際、私は、その内母親をフジ・ロックに連れていこうと考えているのであ る。特別ロック好きでもない人が、どのくらい楽しめるのか?多分、楽しんでくれるだろう、と いう確信があるからである。                                その後は、ヘヴンのAOAでまったり。折しも夕暮れ時に、空に一筋のひこうき雲!だんだん浮 かれて、赤ワインを飲みながらゆらゆら揺れて楽しむ。ゴミを捨てに行った時、ゴミ袋が倒れて ゴミがこぼれていたので拾っていたら、案の定一人の男の子が現れて、何も言わずに黙々と一緒 にゴミを拾ってくれた。世界中で一番クリーンなフェスだけのことはある。フジ・ロックで、ど うしてこんなに平和なんだろうと思ったら、身勝手な行動をとる人がほとんどいないからなんだ という事に気づく。トイレで並んでも、中でぐずぐずしている人がいないのだったら待つのは苦 にならないし、モッシュ・ピットで押されてこけても、周りの人がさっと助け起こしてくれるの がたまらなく嬉しい。街でよくある、ぶつかっても謝らない人とか、何を考えているのかよそ見 をしてふらふら歩いている人もいない。遊びに来ているんだから気持ちが大きくなるのは当たり 前、と言われればそれまでだが、酔ってても浮かれててもちゃんと自分の面倒が見られる人が多 いのは素晴らしい。普段の暮らしでは、仕事や用事に追われて気が立ってしまいがちだが、いつ もこんな風な気持ちでいられたら、世の中もっとうまく行くのにな…と思わずにいられない。   AOAの後は、ホワイトのレフト・フィールドでまたトリップ。ずっとゆらゆらしていたかった が、フジ・ロックに来られなかった知り合いの依頼なので、途中でエアーを見にレッド・マー キーに行くことにする。ここでも、珍しいアンコールを目撃。                 そしてグリーンのプライマル。最後まで見るとホワイトへの道が混みそうなので、途中でホワ イトに向かい、電気グルーヴを見る。瀧の手が長い!!またしても高みの見物で、ビーチ・ボー ルが投げられて観客の頭の上を転がっていき、一番前に行ってしまって、その都度セキュリティ がわざわざ客に投げ返してくれていた様子を見てまた嬉しくなる。               最終日の夜は長い。グリーンに戻って再びソウル・フラワーだ。               さらにこの日は、見逃せないものがあったのだ。トロージャンズ、レッド・マーキーに登場 だ。行ってみるとまだ始まっていなかったので、ケバブ&ライスを購入。なんてくつろいでいた ら、バグパイプの音が。ごはんは後回しにして、体が勝手にステージ前へと突進する。すごい ファンみたいになっていた。数日前まで名前も知らなかったのに。この日も繰り返し「フジは世 界で最高」と言っていたギャズが、「お父さんもお母さんも、おじいさんもおばあさんも…従姉 妹も、姪も甥も連れて、来年も再来年も来いよ!」と言っていたのは嬉しかった。〈ゴッド・ ファーザーのテーマ〉をモチーフにした曲、〈りんご追分け〉、〈ジェリコ〉なんかはすっかり 覚えてしまっていたが、他も〈カチューシャ〉〈サマー・タイム〉と言ったギャズ曰く「みんな が知ってる曲」をやってくれて、それが思いっきりスカでハイ・ピッチで煽られまくりで、皆汗 だく。「服なんか全部脱いでしまえ!」というギャズのオーダーに応えて、客席エリアからレイ ン・コートが投げ上げられた。って事はこの日雨がちょっと降ったのね…覚えてないなー。「こ の後ワールド・レストランで朝まで飲んでるから、一緒に飲もう」みたいなことを言っていたよ うな気がしたが、力つきてテントに帰った私だった。 ギャズはほぼ毎日飲んだくれていたよう だが、あのエネルギーは一体どこから来ているのだろうか。                  キャンプサイト付近にある24時間営業のCD販売テントで、トロージャンズCDを発掘。そし てテントの中で、オゾマトリを遠くに聴きつつ眠りに落ちた、最高の祭りの終わりであった。
8/5
サマー・ソニック
 サマー・ソニック(以下SS)は、今年初めて開催されるフェスである。フジがグラストンバ リーなら、こちらはレディング=都市型フェスということで、特に大阪はZEPP大阪の付近、大 阪駅から地下鉄と徒歩で行けるロケーションで行われた。他にもRISINGSUN、ROCK IN JAPANと フェスがあったものの、洋邦の両アーティストを呼んだのはSSとフジだけで、特にSSは、出演 者が1日目と2日目で入れ替わり、大阪、富士急のどちらで見てもほぼ全部のアーティストを見 ることが出来るようになっている点が斬新だった。そして招聘されたアーティストは、人気の高 いアーティストばかりで話題を呼んだ。  私は当初、8/5に大阪、8/6に富士急でベン・フォールズ・ファイヴ目当てに移動しよう と考えていたのだが、8/6に石川のKIT POP HILLを見に行くことに決まり、8/5の大阪だ けの参戦となった。が、何故かベン・フォールズ・ファイヴの出ない方の日に見たいアーティス トが多く、悔しい思いをする。  さて当日。朝から嫌な予感だ。初めて会うベン・フォールズ・ファイヴ仲間と、元々ぎりぎり の時間に待ち合わせしていたのが、急遽さらに30分遅くする事に決まり、ばたばたしていて冷 静に判断できなかったのだが、どうもこれではオープニング・アクトのモンゴル800には間に 合いそうにもない。そして予感は的中、どころか予想以上の入場待ちの列の長さに、タヒチ80 までゲートの外で聴くハメになる。フェス、特に初めて開催の都市型となれば、混むのは必定。 余裕を持って望まなかった私の手落ちである。  入場時の混雑を緩和しようと思ったのだろうか、リスト・バンドは係の人が付けてくれるのか と思っていたら、「はい」と手渡されてびっくり。一度付けたら外れないリスト・バンドなの に、手渡ししてしまったら、適当に仮留めして置いて後で外し、売ったり交換したり出来てしま うのではないのか?こちらは構わないけど…。それどころか、間違って通し券の列に並んでし まった友達は、1日券しか持っていないにも関わらず、通し券のリスト・バンドをもらっていた ぞ(苦笑)。  この後のAt The Drive-Inもメンバーの動きが面白かった!と友達に好評だったのだが、会場 に着いた時は、あまりの狭さに驚いて、しばらく場所探しにうろうろして、ライブ観戦体制に移 れなかったのだ。どこかに荷物を置き、友達と陣地を決めて、あとはそれぞれマイ・ペースでラ イブを見て、ベン・フォールズの時に落ち合うつもりだったのだが…。普通の野外イベント、く らいの広さではなかっただろうか?屋台も、3種類くらいしか食べ物を置いていなくて(富士急 は充実していたようだ)、フジ・ロック病がぬけていない、祭り好きの私には厳しかった。おま けにカンカン照りで、足下には砂埃。いや、ちゃんと日除けテントも用意されていて、ステージ 2は屋根つきで、日射病対策は万全なんだよ。それに、チケットを買う前から分かっていたこと だけど、ブロック分けもばっちり。将棋倒しになって死ぬことはまずなさそうだ。でも嫌なんだ よな…こういうの。  ステージ2はどうなってるんだ?との興味も手伝って、2へ移動。普通の道路沿いに行って、 ショッピング・モールみたいなところにある建物に入る。確かに涼しいけど…。そして便利なの も事実。コイン・ロッカーに荷物を預けてSNUGを見る。  その後、トイレで女の子に話しかけられて、外で連れも交えて立ち話となる。スネイル・ラン プを見る予定だったのだが…。さらにその後もベン・フォールズつながりの人と遭遇し、スネイ ル・ランプは敢えなく終了。  トライセラトップスで、半ばやけで踊り狂う。  でもまあ、お客さんは楽しんでいるように見えたし、お店の人もニコニコしてくれてて、雰囲 気は良かった。大体このフェスでの段取りが悪かったのは、私が疲れていたからかも知れない。 マンサンで、またも熟睡してしまう。  じりじりとベン・フォールズ・ファイヴの時間が近づいてくる。なんだか早い1日だ。ベン・ フォールズ好きのトップ・バッターのような友達(この時点ではまだ会ったことがなかったが) は仕事があって、ベンの出番ぎりぎりに着くという。ちゃんと間に合うか心配で、皆でそわそわ してしまう。それから私は、イギリスでベン・フォールズ・ファイヴを見たとき、いい雰囲気 だったのにダイブしそびれてしまったおかげで、今回跳ぶのだ!と決めていて、それもあってど きどきしていた。ミッシェルやレイジでダイブするより、よほど気を遣うものなのだ。でも、 「ベン・フォールズ=静かに聴くもの」と思っている人が多い日本でも、海外みたいに、気軽に 飛び跳ねて、わいわい言いながら見たいじゃないか。  WEEZERは初めて見たけどなかなか好みで、楽しませてもらった。しかし、後半はベン・ フォールズに備えて最前ブロックの入り口まで移動したりして、ちょっと気もそぞろになってし まった。  さていよいよ、のベン・フォールズ・ファイヴだ。周りはその後のグリーン・デイのファンが 多いみたい?やがて出てきたベンは、怪しいロン毛のかつらをかぶっている!!なんだ??そし てベースのロブは、また少し太ったような(笑)。そしてダレンの3人で、まずは〈Army〉か ら始まった。野外フェスの最初にちょうどいい感じ。その後〈Battle Of Who Could Care Less〉〈Kate〉と続いて、こりゃたまらん!跳ばせろ!!とゾクゾク。どうも私には、ファー ストのパンクっぽいノリの良さよりも、セカンド・アルバムのグルーヴとコーラスの聴いたポッ プなノリが合っているみたいだ。前回のツアーでもセカンドの曲を多くやっていたので、その後 遺症なのかも知れないが。  とは言え、中盤で飛び出したファースト・アルバムからの曲〈Juliannne〉には大感激。初来 日時のブート盤で、この早口の英詩をオーディエンスがしっかり声を合わせて歌っているのに感 心して、私もライブで一緒に歌いたかったのだ。それに、よけいなお世話だが、ファン以外の人 達も盛り上がってくれそうな曲だと、ついつい安心してしまう。  次の〈Best Imitation Of Myself〉にも感動。一緒に見ていた仲間が、是非やって欲しいと 言っていた曲だけに、この曲が始まった時は、私達の周りが異様に騒然としたものだ。 そして〈One Angry Dwarf And 200 Solemn Faces〉。セカンド好きの私は行くしかない!て 事で、友達の足と肩を借り、ダイブさせていただいた。ただし、ダイブするには前の方にいすぎ たため、横に逃れて長くサーフィンしていようと試みるも、ヒマにしていたセキュリティにさっ さと受け止められて外に出されてしまった。  で、この後が大変だったのだ。隣のブロックとの間に自分のブロックに戻る入り口があるだろ うと思っていたのに、そんなものはなかった。恐ろしいブロック割りの柵が延々続いているとこ ろをぐるぐる半周して、ようやく元いたブロックの入り口にたどり着いたら、「もういっぱいで すから」と入場制限される始末。「今そこから出てきたんじゃい!一人分空いてるわい!!」と 言いたいところ、あきらめて横のブロックに進入(注・ブロック指定は縦割り。リスト・バンド で色分けされていて、違うブロックには入れないようになっている。同じブロック内の前後は自 由に行き来できるものの、これがこまかく柵で区切られていて、人数が多くなると入場制限され てしまうのだ。が、横のブロックには、たとえ空いていてもそこのリスト・バンドをつけていな い人は入れないはずなのに、チェックもれで入れてしまった)。そして前に行く。だってダイブ したからと言って、最前エリアにいたのに一番後ろに回されるのはちょっとあんまりじゃない か?  曲はクライマックス、〈Underground〉が始まっている。道を空けてくれない人がいても、で かい声で歌ってみせたら、「あ、なんだ、グリーン・デイのファンじゃないのね?」とばかりに よけてくれたのが面白かった。そして元いたブロックの横の、最前エリアにたどり着く…仲間が 特製ベン・フォールズうちわを振っているのが見えた。あそこに行きたい…しかし、柵の側には セキュリティが。苦肉の策として、私はヘビ女と化し、柵の下をくぐってしまった。マナー違反 です、すみません。というか、場合によってはつぶされて死ぬので、良い子は真似しないよう に。  そのまま〈金返せ〉で終了。ベンは最後までヅラを取らなかった。何だったのだろうか?今 回、絶対やると思っていた新曲が一切なし、と言うことや(すでにインターネット上ではダウン ロード出来る新曲が何曲もあるというのに)、全体的にお茶を濁したような無難な進行だったの が、少し不満だった。不満とは言い過ぎだが、まあ予想通りのライブということ。ベン・フォー ルズ・ファイヴのカラーと日本の野外フェスという組み合わせからするとこんなものかなとも思 いもするが…。いっそステージ2でやった方が良かったのでは?とか、別のフェスだったら違う 展開もあったかも知れない、などとも思った。とにかく、ニュー・アルバムとこれからのステー ジに、その分を期待する事にしよう。  そしてこの後、仲間にベンの出待ちをすると聞いて、ちょっとびっくり。私はグリーン・デイ を見たかったので、待ち合わせしようとするが、その暇もなく数人、タクシーで追っかけて行っ てしまった!携帯を持っていない私は、グリーン・デイを見ればそのまま皆とはぐれてさような ら、なのである。焼き肉大会やベン・フォールズ・ファイヴなわとび大会をやるという話だった ため、はぐれてはまずいかな?と待ったけれど、最終的には、帰りたいという人も出てきて、私 はグリーン・デイを見ることにした。  彼等も初めて見たのだが、かなり良かった。初めて開催されたフェス、暑くて狭くて砂だらけ だったフェス。そんなものが夜にまぎれて、グリーン・デイの大きな存在に、すっかり呑み込ま れていたようだ。一番後ろの方で見ていたら、そんな遠くなのに隣でも踊っている人達が何人も いて、すっかりなごんでしまった。途中花火が上がり、ハッピーな気分でいっぱいになる。そし て、なんといっても、最後の方でドラムをたたき壊し、挙げ句に火まで付けていたのには笑え た。去年同じ頃に見た、マリリン・マンソンの気の抜けたドラム壊しとは比べものにならないダ イナミックさだった。  楽しそうに帰っていく観客を見て、私がこのフェスが満喫できなかったのは、会場や一部ス タッフの教育、お祭り的要素に対する主催者と客の価値観の違いなどのせいだけでなく、私個人 の問題も大きかったのだな、と思わされた。このフェスにしか参加していなくて、2日とも参加 していたら、もう少し気分も変わっていたのではないか。そう思いつつも、やはりフェスなら自 然、キャンプ、屋台や各種活動の場があって然るべきだという考えは譲れないのだ。現状では、 画期的なイベントとしか言えない。まだ、フェスとは呼びたくない…そんな私は、やはりフジ・ ロック病にかかっているのだろうか。                          
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